6-7.株式の種類と事業承継・相続対策について |
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引き続き、株式会社についてみていきます。今回は「株式」についてです。会社法の施行により、これまでよりもさまざまな種類の株式を発行することが出来るようになります。例えば、剰余金の分配を優先的に受けられる株式や、議決権のある株式、ない株式などです。これは一見、中小企業には関係ないことのように思えますが、実は使い方によっては非常に便利なものです。
《1:さまざまな種類の株式が発行可能に》
例えば、オーナー社長が株式を100%握っている株式会社があるとします。その社長には長男と次男の2人の息子がいます。そして、社長が高齢でそろそろ引退して、会社の経営を長男に任せたいと考えている場合に、もしいきなりその会社の株式を全部長男に譲ってしまえば、多額の贈与税が課せられることになります。ちなみに、株価というのは会社の業績が良いほど高額になりますので、業績の良い会社ほど、贈与税の問題から事業の承継が難しいというジレンマに陥り易いのですね。
このような場合、例えば株式のうちの50%を議決権のない株式にして、その議決権のない株式は引き続き自分が保有し、議決権のあるほうの株式のみを長男に贈与すれば、長男は実質的には会社の経営の決定権をすべて握ることができますし、贈与税も全部の株式を譲るよりは安く済みます。
また、その後オーナー社長が亡くなって、残り50%の株式を例えば次男が相続したとしても、次男が相続した株式には議決権がありませんので、長男の会社経営に口を出すことは出来ないわけですね。会社の経営権を巡って兄弟げんかが起こることを、未然に防ぐことが出来るわけです。
この例では、さらに長男に譲る株式を、議決権はあるが、剰余金の分配額が少ない株式(議決権のある劣後株)、オーナー社長の手元に残す株式を、議決権はないが、剰余金の分配額が多い株式(無議決権の優先株)にしておけば、長男に譲る株式の評価額をさらに抑えることが出来るので、贈与税・相続税対策としてより有効なわけですね。
さらに、株式に「譲渡制限」をつけておけば、株の評価額はさらに下がりますし、自社の株が見知らぬ第三者の手に渡ることを、防ぐこともできるわけです。この「譲渡制限」は、旧商法では一部の株式だけに設定するといったことは認められていませんでしたが、会社法の施行により、例えば「議決権がある株式のみ譲渡制限をつける」など、一部の株式のみに設定することも可能になりました。こうすることで、会社の乗っ取りを防ぎつつ、議決権のない、つまり経営に口を出せない株式だけを流通させることも出来るわけですね。(もっとも、この場合には「公開会社」の扱いになりますので、取締役会や監査役(会)の設置が必要となります。)
また、「死ぬまで現役で経営する」という方についても、とりあえずその株式の50%を「議決権のある劣後株:A株」、残り50%を「無議決権の優先株:B株」にしておいて、遺言書で「A株は長男に、B株は次男に、それぞれ相続させる」と書いておけば、自分が死んだ後、会社の経営権を巡って兄弟が争うといったことを防ぐことが出来ます。
なお、このような、さまざまな種類の株式を発行する場合には、あらかじめ定款でその旨を定めておくことが必要です。
《2:相続人から株式を買い取ることが可能に》
また、定款に定めておくことにより、相続によって株を手に入れた相続人から、会社が強制的にその株式を買い取ることが出来る規定を設けることも、認められるようになります。
例えば、美容室を経営している女社長が株式を60%保有していて、残りの株式40%を社長の長男が保有している株式会社があるとします。このような場合に、もしもその長男が不幸にして事故で亡くなり、持っていた株式のすべてを「長男の嫁」が相続したらどうなるでしょうか? 「嫁と姑」の共同経営という状態になりますよね。この先うまくいくでしょうか(笑)。
こんな場合にも、『定款で定めておけば』、長男の嫁が相続した株式を、会社が強制的に買い上げることが出来るのです。
もっとも、この制度は裏目に出ることもあります。例えば株式の80%を社長Aが、残りの20%の株式を同族以外の出資者Bが保有しているような会社で、Bが死んだ場合に備えてこの「相続人からの株式買取請求」の規定を定款に設けておいたところ、Aの方が先に死んでしまったような場合には、何もなければAの配偶者や子供が株式を相続し、会社を承継するはずのところ、株式の買い取り請求を受けてしまい、結局Bに会社を乗っ取とられてしまうといった事態もありうるからです。
こうしたことを防ぐためには、Aが生前にある程度の株式を配偶者や息子に移転しておく必要があります。いずれにせよ、株主の顔ぶれや持ち株比率をよく考えてから、定める必要があります。
なお、相続人からの株式買取請求の対象となるのは「譲渡制限株式」のみです。ただし、買取請求をする株式に譲渡制限がついていればいいので、この制度は一部の株式のみに譲渡制限をつけているような「公開会社」においても利用することが出来ます。
《3:株式の譲渡制限の定め方》
ところで、本節では「株式の譲渡制限」という言葉が頻繁に登場しますが、これは定款で、「当会社の株式を譲渡する場合には、取締役会の承認を要する」といった具合に定めておくことをいいます。こうすることで、自社の株式が見知らぬ第三者の手に渡ったり、「口うるさい株主」が今以上に多くの株式を手に入れて、さらに力をつけたり、会社を乗っ取ってしまうといったことを防ぐことが出来るわけです。
なお、取締役会を設置しない会社では、「株主総会の承認が必要」になりますが、定款で、「代表取締役の承認が必要」と定めることもできます。
《4:株券は、発行しないことが原則に》
ここでは、『株式』ではなく、印刷された紙である『株券』のお話です。従来は、株式会社は株主に対し、株券を発行しなければなりませんでした。しかし、平成16年度の商法改正で、定款に「当会社は、株券を発行しない」旨の規定があれば、株券を発行しなくても良いことになりました。
会社法の施行により、株券は発行しないのが原則となり、従来とは逆に、「当会社は株券を発行する」旨の規定がある場合にのみ、発行することになります。
ただし、「非公開会社」では、たとえ「当会社は株券を発行する」旨の規定がある場合でも、株主から請求がなければ、株券を発行しなくてもよいとされています。
もっとも、中小企業で実際に『株券』を発行している会社は、あまりなかったというのが実情なのですが、法律がそれを「追認」する形になったわけですね。
ただ、株券を発行しなくても良いとした理由はそれだけではありません。現在のようにインターネットで株式を売買する時代には、「デイ・トレーダー」と呼ばれる、一日に何度も株式の売り買いをする人々もいるわけですね。こうした場合に、いちいち紙で出来た『株券』を、売買の都度やりとりするというのは、実情にあわないので、いっそのこと廃止したという面もあるようです。
なお、株券の発行を正式に廃止するためには、定款の変更と、変更登記が必要となります。この場合には「株券提供公告」といって、官報や新聞紙に一定の事項を掲載しなければならないのが原則ですが、実際に株券を発行していない会社の場合には「株券を発行していない証明書」という、簡易な書類で手続をすることもできます。詳細は当事務所かお近くの司法書士の方にお尋ねください。
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