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隔週刊「理容室・美容室の経営法務」 第68号 2007年6月6日発行
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<発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史>
隔週水曜日発行 関連サイト http://www.ribiyou6pou.com/
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★☆『キャバクラ嬢・髪型裁判』を分析する(11)☆★
みなさま、こんにちは! 司法書士・行政書士の森です。
今週も、よろしくお願いいたします。
さて、前号では、今回の「事件」について、裁判所としてはどのように事実
認定したかについて書いてみました。
「事実認定」というのは、要するに、「事実」そのものは、当事者にしかわ
からないので、(もっとも、当事者でも記憶違いや、認識の違いというものは
あるわけですが)当事者双方の主張や、証拠、証人の発言などをもとにして、
一応これが「事実」であると裁判所が「認定する」ことをいいます。
そして、この事実認定を前提に、では、美容室側に落ち度はあったのか、そ
の落ち度は、契約上あるいは法律上、損害賠償をしなければならない程のもの
なのか、損害賠償をしなければならないとするならば、その金額はいくらにな
るのか、といったことを、次に決めていくわけです。
さて、今回の裁判では、原告のキャバクラ嬢側は、損害賠償として629万
9008円を被告の美容室側に請求しています。この金額の根拠はどこにある
のでしょうか? 今回は、この点について、見ていきます。
《原告のキャバクラ嬢側の主張》
まず、原告のキャバクラ嬢側は、以下のような傷害が発生したと主張しまし
た。
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1.傷害
(ア)原告は,本件カラーリングによって,原告の頭皮に,すずめの卵大
の円形脱毛症様のただれを生じさせた。
(イ)原告は,本件カットによって,必要以上に髪が切られ,その一部が
40cm近く短くなり,エクステンションが必要となった。
2.後遺障害
原告には,円形脱毛症(長期の通院加療を要する。),頭皮炎症及び
頭髪損傷(約40cm,数百本)の後遺障害が残存した。
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次に、これらの傷害が発生した結果、以下のような金額の損害が発生したと
主張しました。
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1.主位的主張(おもな主張) 合計…629万9008円
(ア)治療費(円形脱毛症の治療費) … 9280円
(イ)後遺障害による逸失(いっしつ)利益…319万9728円
(ウ)後遺障害(等級12級相当)慰謝料 …200万円
(エ)通院(月1回5年分)慰謝料 … 52万円
(オ)弁護士費用 … 57万円
2.予備的主張(上記1のおもな主張が認められなかった場合の請求)
(ア)治療費(円形脱毛症の治療費) … 9280円
(イ)後遺障害による逸失(いっしつ)利益… 99万8088円
(ウ)後遺障害(等級12級相当)慰謝料 … 8万3333円
(エ)通院(月1回5年分)慰謝料 … 52万円
(オ)弁護士費用 … 上記合計の1割
3.エクステンション費用(上記1,2を補うもの)
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まず、(ア)については、円形脱毛症の治療費の実費ということで、それほ
ど疑問はないかと思います。
問題は(イ)と(ウ)ですよね、これが、今回の損害賠償の額を大きくした
一番の要素です。
さて、まず(イ)についてですが、この「逸失利益(いっしつりえき)」と
いうのは、その傷害がなければ、当然得られていたはずの利益です。例えば交
通事故などで、加害者の違法な運転によって怪我をした被害者が、その怪我に
よって何ヶ月か働けなくなったとします。すると、その間の事業や給与の収入
が、その事故による怪我によって失われるわけですので、その分が逸失利益と
して加害者に請求できることになります。(もっとも、実際には休業補償など
が得られるので、その分も考慮に入れることになります。)
また、入院なので完全に働けなくなった場合はもちろんですが、怪我によっ
て労働能力が低下して、その結果収入が減ってしまった場合にも、減った分の
収入は「逸失利益」として請求することが出来る場合があります。
今回は、原告のキャバクラ嬢は、自らの容姿が今回のカットによって「だい
なし」になった結果、「営業成績」が下がり、収入が減ったので、その減った
収入分を「逸失利益」として請求しているのですね。
そして、その金額「319万9728円」の算定根拠は以下のとおりです。
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原告は,d町の高級キャバクラCの人気キャバクラ嬢であり,時給2万
円で,1日6時間,週5〜6日出勤し,月平均出勤が25日であった(1
日あたり1万3000円費用負担)。
上記後遺障害,特に頭髪損壊は,女子の外貌を著しく変貌させるもので
あり,今後の頭髪の伸び(5年後に回復と想定)を考慮しても,その高級
キャバクラ嬢としての活動の遂行に重大な支障を生じさせることはさけら
れない。具体的には仕事中はエクステンションをして外見をカバーしてい
るがその費用は多額である。また,出勤前は,Cのヘアメイク師にエクス
テンションをつけてもらっていない状態だが,この状態を顧客に悟られな
いようにするために,原告は,「同伴」営業活動ができなくなった。その
ため,原告目当ての客が事件以来減少傾向にあり,その売上が日増しに落
ちている。原告の収入は売上比例であり,その収入に対する打撃は大きい。
したがって,逸失利益は次のとおりとなる。
(2万円×6時間−1万3000円)×25日×12ヶ月×0.14
(後遺障害等級12級相当)×0.712(25歳から30歳までの
ライプニッツ係数)=319万9728円
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上記の計算式のうち、0.14というのは、この傷害によって失われた労働
能力の割合だと、大雑把に考えてください。つまり、今回の髪型によって、原
告のキャバクラ嬢の労働能力は14%低下したという主張です。
また、「ライプニッツ係数」というのは、本来なら労働によって得られる収
入は将来「分割で」つまり、毎月少しずつ得られるところ、そのお金を「一括
で」つまりまとめて得られるのだから、その分は減額するという係数です。
要するに、すぐに手に入るお金と、将来少しずつ得られるであろうお金とは
同じ金額でも価値が違うという考え方です。(大雑把な説明です。なお、興味
のある方は、「ライプニッツ係数」をキーワードにしてGoogleなどで検索して
みてください。)
上記の場合には、0.712をかけていますので、71.2%ということに
なります。
ただし、原告のキャバクラ嬢側の弁護士さんは、この319万9728円と
いう金額では、裁判官に認められない可能性があると判断したのか(どうかは
知りませんが)、もしこの請求金額が認められなかった場合には、以下の金額
を請求するという具合に、2段構えで請求をしています。(予備的主張)
この「予備的主張」では、99万8088円を請求しています。
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予備的主張
(イ) 後遺障害による逸失利益 99万8088円
原告の基礎収入,後遺障害の程度は,主位的主張どおりである。
ただし,その外貌は,頭髪の伸びによって,もとの状態に戻りうる。
そして,頭髪は1月当たり約1cmび,本件で約40cm程度の頭髪切断があ
ったことからすると,頭髪が完全な状態に至るには,3年4か月程度を見
込めばよく,その労働能力喪失率は頭髪の伸びに従って3年4か月後まで
漸減するから,その逸失利益は次のとおりとなる。
3210万円×0.14×0.457(25歳から3年4か月後までの
ライプニッツ係数)÷2=99万8088円
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要するに、髪の毛は伸びるものであるから、いつかは元通りに回復するとい
うことなので、その分を調整すれば、損害額は99万8088円になるという
ことなのですね。
次に(ウ)について見ていきます。これは要するに「慰謝料」です。傷害によ
る治療費=物理的損害とは別に、精神的な損害の賠償として請求しています。
この金額200万円の根拠は、「後遺障害等級」によります。
( http://www.asahi-net.or.jp/~zi3h-kwrz/law2afteref.html )
上記のウェブサイトの「12級」の15番に、「女子の外観に醜状を残すも
の」という項目がありますよね。この場合の裁判での慰謝料額は、この表では
290万円となっていますね。また、先ほどの「14%の労働力喪失」も、こ
の表に載っています。
もっとも、ここでも「予備的主張」として、8万3333円を請求していま
す。
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(ウ) 後遺障害慰謝料 8万3333円
後遺障害12級として290万円を3年4か月と期間限定であって,漸
減型の労働喪失であること等から以下の修正が必要である。
290万円×(3年4か月/58年(25歳女子の平均余命))÷2
=8万3333円
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これも、上記(イ) の予備的主張と同じような考え方です。
それから、(エ)の通院慰謝料52万円については、3年4か月間で頭髪の
修正のために,美容院に通院を最低月1回繰り返す場合の費用として算定して
います。
また、3のエクステンション費用については、以下のとおりです。
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原告が,エクステンションにより,頭髪の長さを修正し,一定のカバー
をするには,2か月に1回,5万円程度のエクステンションを用いればよ
く,現に,ある程度エクステンションの使用によって対応していた。
5万円×(3年4か月/2か月)=100万円
これによって一定のカバーをしても,元の頭髪そのものになるわけでは
なく,ドレスアップデー等催し物の際に要求される,特別のヘアスタイル
への対応に支障が生じ,原告は平成16年4月を境に現実に20〜70%
の収入減少が生じている。
したがって,エクステンションの実費で計算するのでは,損害のすべて
を反映することができないため,これは,上記損害計算を補完するものと
して主張する。
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これを読み終えて、感想はいかがでしょうか?
とりあえず、かなり高額な請求だなという感想をお持ちですよね?
では、被告および裁判所は、この請求を認めたのでしょうか?
(次号に続く)
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<ご注意>
当メルマガの記事は、法律の専門家では無い方を対象に、なるべく解り易く
読んで頂けることを基本コンセプトにしております。したがって、内容の厳密
さという点では、多少いたらない点もございます。
実際にこの記事に書かれているようなトラブルを抱えている方につきまして
は、当事務所もしくは他の法律専門家の方に、個別に相談されることをお勧め
いたします。
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<編集後記>
すでにみなさまご存知のように、ZARDの坂井泉水さんが、事故死(?)
してしまいました。
私は、特にZARDの大ファンということはないのですが、それでも好きな
アーティストのベスト3には入ります。また、ZARDがデビューしたのが、
ちょうど私の学生時代であり、20代の頃はCDも買い集め、よく聴いていたの
で、とても衝撃的かつ残念なニュースでした。
今、あらためてその作品を聴いてみると、やはり1曲1曲に想い出がありま
すね。特に私が好きな曲は「あなたを感じていたい」と「マイ・フレンド」で
した。この場を借りてご冥福をお祈りします。
それでは、次回もよろしくお願いいたします。
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○発行元:金沢みらい共同事務所 司法書士・行政書士 森欣史
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